パンクは勢いを失い、よりメロディアスになりどんどん毒を失っている。ストラングラーズの真に鋭いポップチューンが頂点に達した作品、それがおそらくこの1984年の『AURAL SCULPTURE』だ。このアルバムはオリジナル曲をそろえ、3人編成のホーンセクション(テナーサックスを担当しているのは、後のプロペラヘッドのアレックス・ギルフォードだ)をはじめて取り入れた、最後の傑作といってよい。ストラングラーズのファンの中でもパンク原理主義者たちはホーンになじめなかったようだが、『AURAL SCULPTURE』はシンセサイザー先行のユーロポップと、ブルーアイド・ソウルの勇敢な結合として、今日までその名を維持している。ローリー・ラスマンの明晰で完璧なプロダクションワークを得て、メインストリームのポップの枠にほどよく収まったアルバムだ。

聴きどころとしては、ストラングラーズとは思えない「MadHatter」(ビブラホンとトロンボーンを使ったドゥーワップ)、ミニマリズムが冴えるヒットシングル「Skin Deep」、ヨーロッパびいきのJJバーネルが戦後のヨーロッパを反芻する、寒寒とした「Northwinds」(ストラングラーズのベストソングに挙げられている)のほか、「Ice Queen」「No Mercy」ヒュー・コーンウェルの「Laughing」(当時殺害されたマーヴィン・ゲイへのトリビュート)など、よくできた魅力的なポップソングが並んでいる。

ボーナストラックとしてB面になった全曲が収録されているが、これにはアメリカナイズされたラジオ・モスクワのアクセントでJJが歌う、反体制派のソヴィエトの友、ウラジミールの当時の日記「Vladimir AndThe Beast」も含まれている(「マルクスとレーニンの革命の目標や目的を一時期的に見失ったことを許される望みがあるのは、世界最高の社会主義者による民主主義においてだけ。私の病気の治癒には、2年の月日を要した」)。

丹念にリマスターされ、雑誌『ストラングルド』のライター、ニック・ヨーマンスによる優れたライナーノーツが添えられたこの復刻盤は、ソニーとストラングラーズの大傑作といえる。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)

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1. Ice Queen
2. Skin Deep
3. Let Me Down Easy
4. No Mercy
5. North Winds
6. Uptown
7. Punch & Judy
8. Spain
9. Laughing
10. Souls
11. Mad Hatter